熊本プロジェクトとは

写真造形作家であり、現代美術家でもある鈴鹿芳康の作品に、「解脱したシャツ」というシリーズがあります。
これは、いろんな人が愛用してきたシャツを、その機能から解放し、
再生する過程を通じて人間が生きている意味や価値を探っていくというものです。
伝統の和紙制作の手法をヒントに、一枚のシャツを綿の状態に戻して襟元とボタン線を残し、一枚の紙の様に再生させる。
それは、機能を失いながらも、内包された記憶が薫り立つような美しいフォルムをしています。

既にシャツを提供していただき作品化されたのは、写真家、画家、建築家、デザイナー等、
鈴鹿と深い縁のある方々のシャツでした。
(本シリーズで、1997年 第16回今立現代美術紙展で日本紙アカデミー賞を、1999年には第12回全国和紙画展アート部門にて金賞を受賞)

このシリーズをさらに熊本で展開したい。独自の視点で熊本の「人」を選出し、
その方のシャツで作品を制作し展覧会を開催しようというのが、今回の熊本プロジェクトです。
きっかけは、2013年春、島田美術館をお借りして行った茶会。
ピンホール撮影で熊本・阿蘇を訪れるようになった鈴鹿は、教え子の私(大畑)を通して熊本で茶会を催し、
熊本の地や人と縁を結ぶようになりました。

この企画が実現し、熊本に生きる、あるいは生きた様々な人を再認識する機会と、
誰かのシャツが作品として生まれ変わる機会と、
鈴鹿芳康という作家を知ってもらう機会を得られますことを心から願っております。

私(大畑)に突然声をかけられ「シャツをください」と、これから懇願される方々、
どうぞご承諾いただき、シャツに新しい価値を与えてください。
シャツを提供するというカタチで、作品作りに参加してください。 心よりお願い申し上げます。


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